人事労務アウトソーシング メリット・デメリット

従来から給与計算や勤怠管理など、定型業務を中心に人事業務をアウトソーシングすることはありましたが、働き方改革・人手不足、ITの進化などの影響がで、引き続き定型業務もしくは非定型業務において人事業務の一部をアウトソーシングできないかと検討している企業が増えています。アウトソーシングは企業が抱えるさまざまな課題に対して効果的かつ効率的な手法です。今回は、そんな人事領域でのアウトソーシング化に伴うメリット・デメリットについてご紹介します。

●人事アウトソーシングとは
人事アウトソーシングとは、人事業務をアウトソーシングすることです。社内では回せない、回しきれない人事業務を社外に委託し、効率的に進めることを目的としています。アウトソーシングとは外注、つまり業務を社外に委託し代行してもらうことを指します。

●BPO(Business Process Outsourcing)との違い
アウトソーシングではリソースの不足を補うために業務の一部を委託します。
一方で、BPOも広い意味ではアウトソーシングの一種ですが、BPOでは、対象分野の業務を丸ごと外部に委託します。

●シェアードサービスとの違い
シェアードサービスとは、複数のグループ会社に共通して存在する部門、例えば人事部や経理部などを1社に集約することであり、1つの人事部がグループ会社各社すべての業務を担当します。

●アウトソーシングに向いている人事業務とは
人事業務の領域は幅が広いですが、給与計算や勤怠管理、社会保険業務、人材採用 、人材育成、人事評価など重要な業務であるもの、事務的な作業が多く含まれるもの、人事評価のように外部者による評価の方が公平性が担保できるものなどがあります。

●人事業務をアウトソーシングするメリット
メリットとしては以下、5つが挙げられます。

①会社のコア業務に集中できる
コア業務とは、企業の経営や従業員のモチベーション・生産性に関わるような重要度の高い業務のことであり、例えば給与計算や各種保険手続き、勤怠管理といった業務をアウトソーシングすれば、今までそこに費やしていた時間・労力を教育制度や人事評価制度の練り直し、人員配置の検討などのコア業務にあてられます。従業員のパフォーマンス向上につながり、企業の業績にもよい影響を与えられるでしょう。

②コスト削減できる
最も大きなメリットは、人件費を削減できることです。例えば給与計算を正社員が担う場合、大企業であれば数名がかりで運用しているのではないでしょうか。これを外注化すれば、場合によっては半分以下のコストで運用することも可能です。この金銭的コスト削減効果は企業にとって大きなメリットになります。

③法改正にタイムリーに対応できる
労働基準法をはじめとする法対応が必要な人事業務が多く存在しています。人事部員は常に法改正に目を配らなければなりません。しかし中小企業や人事部員が少ない企業では、法改正への対応がなかなか難しい場合もあるでしょう。専門性の高い外注ベンダーに人事業務を外注することで、こうした法改正にもタイムリーに対応できます。

④人で不足を解決できる
日本では少子高齢化による労働人口の減少が問題となっています。さらに残業時間の上限が設けられたことで、人員不足を時間でカバーすることが難しくなっている状況です。しかし、人員不足で対応しきれない業務を外部に委託すると、人員不足の課題は解決できます。従業員のリソースにも余裕が生まれ、過労やモチベーションの低下、それによる人材の流出も防げるでしょう。

⑤多様な働き方を実現できる
人事業務をアウトソーシングすると、人事部の仕事をリモートワークで行うなど多様な働き方ができるようになります。人事業務の中には従業員の個人情報を扱うものも多いため、そうした情報を家に持ち帰り作業することは難しいとされてきました。しかし、出社しなければできない仕事をアウトソーシングすれば、人事部の従業員でもリモートワークが可能になります。多様な働き方が可能になることで、従業員のモチベーションやエンゲージメントの向上も期待できるでしょう。

●人事業務をアウトソーシングするデメリット
デメリットとしては以下、3つが挙げられます。

①社内にノウハウを蓄積できない
事業務を完全に外注化すると、社内でその業務を理解する人材が中期的にいなくなる可能性があります。例えば給与計算を外注化した場合、給与計算に詳しい人材がいなくなり、社員からの問い合わせにすぐ対応できないといったケースが発生します。外注化した業務はベンダー任せになってしまい、本当は人事として知っておくべき知識を学ばなくなる可能性も高いでしょう。社内に業務のノウハウを残しておきたい場合は外注化を検討するべきではないでしょう。

②情報漏洩のリスクが高まる
外部に業務を依頼すると、少なからず情報漏洩のリスクが高まることを意味します。もちろんアウトソーシングベンダーは情報セキュリティ対策をしています。しかし近年ではアウトソーシング業界における情報漏洩事件が後を絶ちません。外注化を検討する際は、信頼できるベンダーとともに情報漏洩のリスクについてもしっかりと検証を行いましょう。

③コストが増大する可能性がある
コスト削減に効果的なアウトソーシングですが、場合によってはかえってコストがかかることもあります。特に専門性の高い業務やイレギュラーな対応を要する業務は費用がかかりがちです。細かいオプションをつけることで費用がかさむこともあるため、今社内にいる従業員でどの程度の業務をさばけるのかしっかり把握し、予算も考慮しながら委託内容を決めることが重要です。

●まとめ
人事業務のアウトソーシングは、コスト面で大きなメリットをもたらします。特にテレワークが普及する現在の社会環境では、アウトソーシングは業務効率化に大きな効果を発揮するでしょう。一方で導入にはデメリットもあるほか、導入までにはそれなりの時間もかかります。信頼できるベンダーと関係を構築しながら余裕を持って導入を進めていきましょう。