■特定社会保険労務士とは
「特定社会保険労務士」は、紛争解決手続代理業務を行うことができるようになった「社会保険労務士」のことです。2007年に司法制度改革においてADR(Alternative Dispute Resolution 紛争解決制度)の代理権獲得がされ、社労士も紛争解決の役割を担うことができるようになりました。ADRとは、訴訟せず民事で紛争を解決する際に、公正な第三者が関与しその解決を図る手続のことを言います。
社会保険労務士資格があり、かつ社労士登録をした上で特別講習を受け、試験に合格し、さらに付記申請をした方のみが「特定社会保険労務士」を名乗ることができます。
■紛争解決手続代理業務とは
紛争解決手続代理業務の具体的な内容は、以下となります。
・都道府県労働局及び都道府県労働委員会における個別労働関係紛争のあっせん手続等の代理
・都道府県労働局における障害者雇用促進法、労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、労働者派遣法、育児・介護休業法及びパートタイム・有期雇用労働法の調停の手続等の代理
・個別労働関係紛争について厚生労働大臣が指定する団体が行う裁判外紛争解決手続における当事者の代理(単独で代理することができる紛争目的価額の上限は120万円)
・代理業務には、依頼者の紛争の相手方との和解のための交渉及び和解契約の締結の代理を含む。
特定社会保険労務士は、依頼主のために「あっせん」等の手続により、紛争の迅速な解決を目指します。
なお、「あっせん」の対象は、個別労働紛争のみです。
※個別労働紛争…労働の契約(賃金、解雇や配属に関することなど)及びその他の労働関係(職場内のいじめ、セクハラ・パワハラ、損害賠償に関することなど)
近年増加傾向にある個別労働紛争(労働者と会社側のトラブル)において、ADRが注目されています。厚生労働省のデータによると、総合労働相談件数は14年連続で100万件を超え、高止まりしている状況です。民事上の個別労働紛争における相談件数は、「いじめ・嫌がらせ」が最も多く、「自己退職都合」や「解雇」などが続きます。年々増加する相談件数から、個別労働問題に対する関心が高まっていることがわかり、今後も需要は増えると見てよいでしょう。特定社会保険労務士の資格取得ハードルは決して低くはありませんが、業務拡大やキャリアのステップアップの一つとして視野に入れていただければと思います。現状はまだ求人の求める資格に「特定社会保険労務士必須」などの明記は少ないですが、社会保険労務士務所はもちろん、人事労務、総門部門で一定以上の労務知識を持っている採用担当からすると「労働相談に対する専門知識のある方」と見られますので書類通過率も高い傾向が出てきております。求人情報を知りたい方は是非お問い合わせください。